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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの現代にも通じる想いを
お伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…
今回は、「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」のあらすじ前編、物語のはじまりから
歌舞伎でもよく公演される「十種香(じしゅこう)」までのお話です。
|あらすじ 前編
「本朝廿四孝」は、五段にも及ぶ時代浄瑠璃で、とても長いお話です。前回の「八重垣姫② ~ 本朝廿四考」
でもお話しましたが、人形浄瑠璃が歌舞伎の人気に圧倒されていた時代に、人形浄瑠璃として作られた
作品なので観客の興味を惹こうと意図して、どんでん返しが相次ぐとても複雑な構成になっています。
現在では、前後の複雑過ぎるお話をカットして、四段目の「十種香」と「奥庭狐火」が歌舞伎などで
よく公演されています。そこで、あらすじを前編と後編の2回に分けて、今回は「十種香」までのお話を、
次回は「奥庭狐火」以降のお話をしようと思います。
前回もお話した通り、実在する人物が数多く登場しますが、ストーリーはフィクションなのでご承知おきを。
|十種香までのお話
ときは戦国時代、室町幕府は第12代将軍足利義晴の頃、越後(現在の新潟)の上杉(長尾)家と甲斐
(現在の山梨)の武田家はとても険悪な仲です。というのも、上杉家は、武田家の家宝でもあり守り神の
「諏訪法性兜(すわほっしょうのかぶと)」を借りたまま返さず、返却を求められても知らぬふりを続けて
いたからです。そこで、将軍義晴が仲立ちとなって、上杉謙信の息女、八重垣姫と武田信玄の息子、勝頼の
縁組をすすめ2人は許婚となります。ところが、その後、将軍義晴が銃で撃たれて暗殺されるという事件が
起き、上杉謙信と武田信玄はその容疑を掛けられてしまいます。2人はなんとか3年の猶予をもらって真犯人
を捜すことになりましたが、それには条件があり、捜し出せない場合は双方の嫡子の首を差し出さなければ
なりませんでした。
そして、真犯人は見つからないまま3年の月日が過ぎ、もちろん両家とも嫡子は犠牲にしたくはありません。
そこで、上杉家では、嫡子、景勝の身替りを立てようとしますが、身替りになるはずの男が片目をえぐって
顔つきが変わってしまい、計略は失敗してしまいます。一方、武田家では身替りが間に合わず、嫡子、勝頼を
切腹させていました。
|十種香
舞台は越後の上杉謙信のお屋敷です。真ん中に広いお座敷があり、その左右に小さいお座敷を配しています。
これは、「本朝廿四考」で中心となった作者、近松半二の得意とするシンメトリーな舞台配置です。
まだ一度も会ったことのない許婚の武田勝頼の絵姿を見て恋に落ちてしまった八重垣姫は、勝頼が切腹した
という知らせを聞いて嘆き悲しみ、部屋に籠って十種香を焚き読経する日々を送っています。本来、十種香は、
組香といって、お香を聞いて、その香りが何なのかを当てる遊びに使われるものですが、勝頼は罪人として
裁かれたため表立っての供養ができず、手元にある香道具で冥福を祈ったと思われます。また、中国の故事に、
焚くと煙の中に亡くなった人の姿が見える「反魂香(はんごんこう)」という伝説があり、それにあやかって
「勝頼さまに一目会いたい」と祈っています。
さて、このお屋敷には「諏訪法性兜」を取り戻すよう武田家からの命を受け、庭師の箕作(みのさく)と
腰元の濡衣(ぬれぎぬ)が乗り込んでいます。そして、実はこの箕作こそが、主君の武田信玄に反逆心をもつ
家老が自身の子供を国主にしようと入れ替えていた、本物の勝頼だったのです。また、濡衣は勝頼の身替わりと
なって切腹した本物の箕作の恋人でした。そのため、もうひとつの部屋では、その濡衣が亡き恋人の回向をして
います。屋敷の外では、箕作(実は、勝頼)が自分の身替りに切腹した本物の箕作と2人の女性の嘆きは自分の
せいだと不憫に思っています。
部屋から出てきた濡衣が、死んだ恋人にそっくりな箕作を見て恋人を思い出して泣いていると、その泣き声を
聞いた八重垣姫が部屋から外を覗きます。すると、愛しい勝頼にそっくりな箕作が立っているので、勝頼さまは
生きていた、とびっくりした八重垣姫は部屋から飛び出して箕作にすがりつきます。
とはいえ、身分がバレてはいけない箕作は勝頼ではないと八重垣姫を突っぱね、それでも箕作が勝頼だと信じて
疑わない八重垣姫は、濡衣に仲をとりもってほしいと頼み込みます。見返りに「諏訪法性兜」を盗んでくるよう
言われた八重垣姫は、やっぱり箕作こそが本物の勝頼だったと確信し、身分を明かしてほしいとさらに詰め寄り
ます。ところが、箕作があくまでシラを切り通すので、八重垣姫は勝頼でもない人に恋を仕掛けた不貞を恥じて
自害しようとします。八重垣姫の決死の覚悟を目の当たりにし、その一途で純粋な想いに心を打たれた濡衣は、
ついに真実を明らかにし、八重垣姫と勝頼はやっと対面し、お互いの気持ちを確認し合います。
東京都立図書館所蔵 三世歌川豊国作「当世自筆鏡 武田勝頼」
https://archive.library.metro.tokyo.lg.jp/da/detail?tilcod=0000000003-00017569
|最後に
いかがでしたか。観客の興味を惹くように創作された「本朝廿四考」は、次々と起こるどんでん返しや
伏線回収、実の正体は…の連続で複雑に交錯したストーリーから目が離せず、惹き込まれてしまいます。
この続きはどうなるのでしょうか。
「十種香」でハッピーエンドでよかった!と思ったあなた、喜ぶのはまだ早いです。
このお話はまだまだ続きます。
次回は、あらすじの後編です。お楽しみに!
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